徳之島町井之川の伝統行事「浜下り」。このお祭りでは夜が明けるまで「夏目踊り」を踊ります。先日、県指定無形文化財でもある「夏目踊り」の練習会に参加してきたのですが…めちゃ難しい!めちゃ美しい!かっこいい!ほんとに日本て、徳之島って素敵。またひとつ「移住してよかった」と思えた体験をシェアします。
浜下り(はまおり)は全国で行われてるイベント
海浜や河辺に行ってみそぎをすることをいう。水には一般にいっさいの罪や穢(けがれ)を洗い流す浄化力があると考えられ,とくに塩を含有した潮水は強い浄化力をもつとされた。
ジャパンナレッジ
(中略)
本来は三日二晩小屋で過ごす大掛かりな行事であった。沖縄北部地方は、この3日間、厳しい忌み籠(ごも)りの生活をした。沖縄中・南部地方では、親類縁者が持ってきた酒肴(しゅこう)で毎晩酒宴を開き、三味線を弾いて歌い踊った。
沖縄を中心に、全国で行われているイベントなんだね~!
海上安全、豊漁祈願、厄払いなどの祈りが込められているものが多いね。
各地それぞれのスタイルがあって、現在まで受け継がれているものもあれば、進化していったものもあるみたい。
現在の浜下りはこんな感じ
地域 | いつ? | なんのために? | なにをする?(昔) | なにをする?(今) |
---|---|---|---|---|
沖縄 | 旧暦3月3日 (3月末~4月半ば) | ひな祭り 女の子の成長と健康祈願 | 額に3回海水をつける 祈りをささげる 白い砂浜に足をつけさせる | 潮干狩り |
奄美大島 | 5月 | 大漁と豊作を祈る | ムシケラシ (稲についた虫を海に投げ入れ、五穀豊穣を願う) | 弁当を持って海で遊ぶ 海上パレード 餅投げ 舟漕ぎレース |
徳之島 | お盆明けの土日 | 祖霊祭 水稲の収穫感謝祭 | 踊り連が各家で夜通し踊る 各家では飲み物などをふるまう | 現在も同様 |
参考にしました
徳之島の浜下り
徳之島の浜下りでは、儀式を以下の流れで行います。
- それぞれの家庭から持ち寄った御馳走を、少しずつカマドの上に乗せる
- カマドの前で、親族の長老が正座して先祖に祈り・唱え(五穀豊穣と親族守りへの感謝・お礼)を捧げる
- 円陣を組みながら語らい飲み始める
- 今年生まれた赤ちゃんに「ミーバマ クマシ(新浜踏まし)」をさせる(成長を祈る儀式)
引用、アレンジしました
夏目踊りとは
別名、「夏の正月」。稲の栽培周期に合わせて開催され、豊作を祈ったお祭りなんだとか。「夏目」は夏節目が由来と言われています。
浜下りの儀式の後、夏目踊りがはじまります。
儀式は午後5時~8時半ころ、夏目踊りは午後10時頃~翌朝9時頃まで踊り続けます。
夏目踊りの特徴
- 鹿児島県の無形民俗文化財に指定されている
- 翌朝まで踊る
- 各家を回って踊り、家内安全や豊作を祈る
- 各家は飲み物やお菓子でおもてなし
- 円陣の内側から太鼓(チヂン)、男性の輪、女性の輪
- 歌・踊り・楽器で三位一体の関係
- 歌う曲の代表は「あったら七月」
- 男女で振り付けが違う曲もある
- 徐々にテンポアップし、激しくなっていく
夏目踊りの練習会に参加してきた
井之川夏目踊り保存会が主催する、夏目踊りの練習会に参加してきました。
夏目踊り練習会
@東京オリンピック ホストタウン交流事業
夏目踊りは未知の世界
前提として…ワタクシ吹奏楽を10年以上してきたんです。だいたいの音楽は初めて聴いても、何拍子で、いまどこを演奏していて、こういう展開になるんだろうな~っていうのが予想できたりするんです…するんですよ…!
正直、侮ってました…!何一つわっかんねぇ。
たとえば盆踊りって4拍子で短めの音楽の繰り返しじゃないですか。夏目踊りはもう最初から何拍子かぜんぜんわかんないし、どこを繰り返してるかもわかんない。
楽譜もない(歌詞本はある)から耳コピ必須なんだけど…島口聞き取れないからどこ歌ってるかわかんない。それどころか何の曲を踊ってるかすらわかんない!メロディラインの法則性も読めない。すっと始まってすっと終わる、そのタイミングも皆さんは一致するんだけど私にはわかんない。
だからこそ、すごくワクワクする!わからないって面白いよね。おとなになってからの、教科書に載ってないような勉強って楽しいよね~!
ちなみに夏目踊りは8・8・8・6っていう琉球の拍子らしい。5・7・5とかなら馴染みがまだあるけど…未知の世界すぎる。こんなに異文化に感じるとは思わなかった。
でも夏目踊りの音階は琉球音階ではなくって、普通の音階なんだって。琉球文化と本土の文化が織り交ざっているのがこーいうところからもわかるね!
8・8・8・6の「琉歌」。NHKが動画解説してます。
夏目踊りの所作も歌も最高に美しかった
今まで音楽もそこそこ幅広く聴いてきた。踊りやダンスは見るのが好きで、YouTubeではブレイクダンス系を見てすげ~!ってなってた。なってたのに…
「人はなぜ歌うのか」って聞いたことありますか?
所説あるなかに「呪詛起源説」っていうのがあって。音楽は神と交信したり、トランス状態をつくるのに不可欠、ってところから音楽が始まったという説。
もうひとつが「感情起源説」。もう、どうしようもなく抑えられないこの気持ちを、歌で表現したところから音楽が始まった説。
夏目踊りが、私にとっては歌詞聞き取れなくてメロディラインもわからないものだったからかもしれないけど…
民族的な、祈りのような。焦がれるような想いを届けたくて歌う。それがとても神秘的で美しく見えて、もうたまらない。たくさんの人が一斉に歌う、地鳴りにも似たパワー。曲が徐々に加速し、トランス状態に拍車がかかる。その熱量。呪詛でもあり感情でもある、古から続く美しいパワーを感じられることってすごくないですか?
(ああ語彙力が足りない。言い表せない。どうか体感してほしい。)
Superflyなどの音楽をプロデュースした人の著書。
音楽の起源の話も、それ以外も読んでよかったな~と思える本。
いろんなしがらみが増えてきたときに、結構読み返してます。
踊りもね…なんであんなに美しいんだろう。踊ってるのは運動神経がものすごく良いわけじゃない、普通の人。誤解を恐れずに言うと、近所のおっちゃんおばちゃんなんですよ。
なんだけど、女性の手舞の所作とか、とんでもなく美しくて。小さいころから染みついた動きなのかな。きっと私が何年練習しても、あの艶やかで無駄のない、しなやかな所作は出せない。それを地元の皆さんはいとも簡単に自然体で出来る。これが本当の伝統文化ってやつで、移住者は簡単には踏み込めない領域なのかも。
でもね、練習の休憩中にみんな「オリンピック観たいからさっさ頑張ろ~」って。休憩開始も終了も合図がなくて、誰かが動くと協調して動く感じ。ゆるいんだけど、成り立つ感じがまたいいのよ~。
井之川にある雑貨屋さん
2021年の本番は8/21(土)~22(日)
お盆明けの土日に開催される浜下り&夏目踊り。今年は8/21~22です!去年がコロナで中止だったぶん、気合十分!楽しみですね~!
移住してよかった…!
夏目踊りの練習会に参加できたことで、こんなにも日本って、徳之島って素敵なんだなって思えたんです。ほんとに。感動して泣きそうなレベルだったのは内緒。
徳之島に移住して4年。やっと島の表面的な美しさの一歩奥にある、本当の魅力にすこし近づけた気がします。これは旅行では味わえない。しあわせだなぁ。
練習会ですらこんなに感動してるなら、本番やばくね?
おまけ。
私の人生でやりたいことリストのひとつ、トリニダードトバゴで開催される「パノラマ」というスチールパン(打楽器)の世界大会に行くこと。出来たら参加すること。この地鳴り感、パワフルさ、陽気さ。身体の髄から感じられたら、たぶん泣く。
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